久しぶりのバカンス、ということでギイに連れてこられた南国の島。 プランは全部ギイにお任せで、ぼくはただついて来ただけなのだけれど、到着したヴィラはそりゃもう豪華で綺麗で、海の上のヴィラなんて初めてだったから、いつになく興奮してしまった。 「そこまで喜んでもらえるとは」 呆れ気味のギイだけれど、一歩表へ出れば足元が海で、魚が泳いでいるのが見えるなんてそりゃ興奮するよね。 と、そこまでは良かった。 夕方、海岸をのんびり散歩していると、目の前を歩いていた日本人観光客の会話が聞こえてきた。 「あそこのヴィラ、一泊45万円だって」 「えー、すごいなー、いったいどんな人が泊まるんだろうね」 「2泊3日で135万円だよ。ありえないよね」 (確かにありえない) そんなヴィラに1週間も泊まることになっているぼくは思わず隣にいるギイを見てしまった。 「おーい、そんな目で見るなよ」 「1週間だと300万ちょっと・・・?」 「だから計算するなって」 もうたいがいのことでは驚かなくなっていたはずなのに、やっぱりこの金銭感覚の違いにはどうしても慣れることができそうにない。 「300万・・・・」 あったら何ができるかなー・・なんて考えてしまうのは庶民の証拠だよなー。 しかし、今さら何を言ったところでしょうがないので、値段のことは忘れて、ぼくはギイが用意してくれたバカンスを楽しむことにした。 |