ドーナツ食べたい


ドーナツ食べたいなぁと思わずつぶやいたのは、テレビのCMで美味しそうな画像が流れたせいだ。
一番近いドーナツショップってどこだっけ?と考えていると、
「ドーナツ作るか」
とギイが言った。
たぶんぼくと同じようにドーナツ食べたいなぁと思ったんだろう。
こういう以心伝心はちょっと嬉しいなぁと思ってしまう。
「ギイ、ドーナツ作れるの?」
「たぶん」
「たぶん?」
ああ、ここに章三がいてくれればなぁ。すんごく綺麗なドーナツが食べられるんだろうなぁ。
そんなぼくの思いなど知る由もないギイは、ネットでドーナツの作り方を調べ、嬉々として準備を始めた。
「ちゃんと穴あくの?」
「任せろ」
「じゃあ任せた」
と、ぼくはギイの隣で、ドーナツが出来上がっていく様子を眺めていた。
「あ!」
「え?」
突然ギイが声をあげ、ぱちぱちと油が弾ける鍋の中を凝視する。見ると、輪になったドーナツたちがぴったりとくっつきあってしまって、巨大なドーナツになりつつあった。
「あーあ、ギイってば」
「オレのせいかよ」
「ぼくのせいじゃないだろ」
とりあえずドーナツ同士を切り離さなくては、とぼくは箸を手にした。
「まぁあれだな、オレたちの愛もこうやって永遠に繋がっているっていう象徴だな、これは」
「さーて、さっさと切り離しちゃおうっと」
「おいおい」
ギイがぎゅうぎゅうとぼくを後ろから抱きしめる。
「ギイ、危ないからちょっと離れて」
「お前が冷たいこと言うからだろ」
「ギイが寒いこと言うからだろ」
子供の喧嘩みたいな言い争いの末に出来上がったドーナツは、シナモンシュガーをたっぷりふりかけた、たいそう美味しいものだった。




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あとがき

揚げたてドーナツは美味しいよね。できれば章三が作ったものが食べたい。