ちょっと寄っていい?と託生が郵便局へと入っていき、出てきた時に手にしていたのは切手シートだった。 見るとシートには淡い色合いの可愛いイラストの切手が並んでいる。 「お、例のチャレンジャーなねずみじゃないか」 「ぐりとぐらだってば」 「それそれ。お前の部屋に本があったな」 「うん。記念切手なんだって。可愛いから絵利子ちゃんの分も買ってみたよ」 「へぇ、喜ぶだろうな」 女の子はこういうの好きそうだよな。 「赤池くんに手紙書こうかな」 「記念切手なんだろ?使っていいのか?」 オレの言葉に、託生が笑う。 「だって切手だからね、使わないと意味ないだろ?可愛い切手の手紙を貰ったら嬉しいかなーって」 「あの章三が喜ぶとは思えない」 というか、記念切手だと気づかないんじゃないか? 「そうかなー。じゃあ奈美子ちゃんに書いてみよう」 「・・・お前、手紙に何を書くつもりだ?」 「そっか。何書こうかな」 脱力しそうな台詞を吐いて、けれど託生がうきうきと楽しそうなので、オレまで何だかちょっと楽しくなってしまう。 「託生、オレにも手紙書いてくれよ」 「ギイに?いつも一緒にいるのに今さら手紙だなんておかしいよ」 「何だよ、絵利子や章三や奈美子ちゃんには大盤振る舞いで、何でオレには何もないんだよ」 がしっと肩を抱くと、託生はくすくすと笑った。 数日後、ポストにはオレ宛の手紙が一通届いた。 貼られていたのはねずみがパンケーキを焼いている絵柄の切手。 「これはパンケーキ食べさせろっていう意味か?」 さてどんな手紙が入っているのやら。 封を切るのが楽しみな手紙なんて本当に久しぶりだった。 |