大人になっても


「崎さん、日本で葉山さんと一緒に暮らすことにしたんだって?」
「みたいだな。っていうか、あいつ仕事もしないでどうするつもりだ」
章三くんがぶつぶつと文句を言う。
「だけど今まで、お休みなんてほとんどないくらいに働いてたわけだし、ちょっとくらいお休みしてもいいんじゃないの?」
だいたい崎さんて、もう働かなくてもいいくらいに稼いでるっていうし。
はいどうぞ、と食後のお茶を差し出すと、章三くんはさらに渋い顔をした。
「まだ29で隠居ってあり得ないだろ」
「ふふ、隠居だなんて老人みたいね」
「笑い事じゃないぞ。葉山もどこまで将来のこと考えてるか分からないし。何だってあいつらはああなんだ?」
「まぁまぁ。章三くんって高校時代からずっと崎さんたちの心配してるのね」
「心配っていうか、今はもう呆れてるっていうか」
「でも、まずは好きな人と一緒に暮らすところから始まるんじゃない?」
「・・・・」
「どれだけ仕事で成功しててもね、好きな人と離れてるんじゃ意味ないって思ったんだと思うな。崎さん、そういうところ一途っぽいもん」
私が言うと、章三くんは嫌そうに眉を顰めた。
「あいつは高校時代からぜんぜん成長してない」
「そういうところが崎さんらしいって思ってるんでしょ?」
そして、きっとそういうところを、章三くんは好きだと思っているのだ。
「今度、久しぶりに4人で食事でもしましょ」
「そうだな」
こんこんと説教してやる、と言う章三くんに思わず笑ってしまった。
たぶんそういうのも、高校時代から変わってないんだろう。



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あとがき

いつまでたってもお母さんな章三。らぶ。