さっきからずっとギイの機嫌が悪い。 それはぼくが「ギイが別れたいって言ったら別れる」という意味のことを言ったせいだと思うのだけど。 もちろんそれは「もしもギイが別れたいと言ったら」という仮定の話であって、実際に言われたわけじゃない。 「ギイってば、そんな子供みたいに拗ねるなよ」 「・・・・」 「ギイ」 「お前、あっさりしすぎ。どうしてオレと別れたくないって思わないんだよ」 どうしてって・・・ 「だってギイ、ギイはいったん決めたことを翻したことないじゃないか。ぼくが何言ったところでどうにもならないに決まってる」 「そんなことはない」 「それに、ギイが別れたいって言わない限り、別れることはないんだし」 「え?」 きょとんとギイがぼくを見る。 「ぼくからは言わない。だからギイが言わない限り別れることなんて ないんだよ。さっきのはただの仮定話だろ?本気で怒るなよ」 ギイはなるほど、とどこか嬉しそうな表情をしてぼくへと向き直った。 「そっか。じゃあオレたち、死ぬまで別れることはないわけだ」 「だから、ギイが別れたいって言わない限りは」 「言うわけないだろ。そうかそうか、託生は別れることなんて考えてないんだ」 「・・・・ニヤけすぎ」 拗ねたりニヤけたり。 ポーカーフェイスだなんて言われるギイだけど、ぼくからすればほんとに分かりやすい。 「託生、オレのこと好き?」 「・・・今さらそういうこと言わせないで欲しいんだけど」 それでも強請られるままにギイの欲しい言葉を言ってしまうぼくも、相当ギイには甘いなぁと少しばかり反省するのだった。 |