「ギイ、こういうのがタイプだって知ってたか?」 目の前に広げられた雑誌。 最近人気の出てきたアイドルグループのメンバー紹介のページだ。20名くらいはいるだろうか。 矢倉がとんとんと、その中の一人を指差す。 「葉山とはずいぶんタイプが違うから、みんな驚いてたんだぜ」 見ると、ギイが選んだという子はちょっと派手めで、たくさんいる女の子の中でも一際目立つ、とても綺麗な子だった。 可愛いというよりは綺麗。 「俺はてっきりこういうのがタイプだと思ったんだけどな」 矢倉がこっち、と指差したのは清楚で目立たない、でもよくよく見ると可愛いという感じの子だ。 「こっちの方が葉山っぽい」 「似てないよ」 「雰囲気がさ」 そうかな。髪がショートってくらいしか似てないと思うけど。 それにしてもギイのタイプってこういう子だったんだ。知らなかったな。 何となく胸の奥がざわざわとした。 その夜、前々から約束していたので、ぼくは一晩を過ごすために、ギイのゼロ番にお邪魔していた。 「ねぇギイ」 「んー?」 昼間の矢倉とのやり取りが、やっぱり胸の中でざわついていて、ギイといちゃいちゃするような気持ちになれなくて、ぼくは馬鹿馬鹿しいと思いながらも聞いてみることにした。 「あのさ、ギイって、綺麗な子が好きなの?」 「はい?」 ぼくの肩を抱いてベッドに横になっていたギイがぱちりと目を開けた。 「三田村はるかちゃんが好みなんだろ?」 「誰だよ、それ」 「は?」 誰だよってギイが選んだアイドルじゃないか。ぼくはむっとしてギイの横腹をぐーで突いた。 昼間の矢倉との会話を伝えると、ギイは少し考えたあと、ああとうなづいた。 「あー、あれな。オレが選んだの、そんな名前だったんだ」 「何それ」 「いや、別に誰でも良かったんだって。あいつら、オレが託生に似た雰囲気の子を選ぶのを今か今かって待ってるのがバレバレでさ。みすみす選ぶのも腹が立つんで、適当に目に入った子を選んだんだ。名前なんて知らないよ」 「・・・・・」 「託生」 ごろんと寝返りを打って、ギイがぼくの顔を覗きこむ。 「ヤキモチ妬いてくれた?」 「・・・・妬いてない」 「自分と逆のタイプだったから妬いた?」 「うるさいよ、ギイ」 ぼくはぷいっとそっぽを向いた。 「そういう可愛いこと言うと、今夜寝かせないからな」 言うなりギイはぼくをぎゅうぎゅうと抱きしめた。 ヤキモチ妬きがギイの専売特許だと思っていたのに、実はぼくもヤキモチ妬きだったのだろうか。 ほんのちょっと反省してしまう夜だった。 |