100均万歳


こづかいの少ない学生たちにとって、100円ショップというのはなくてはならない存在である。
そしてギイは100円ショップが大好きな男だった。
「ギイなら100均じゃなくても好きなもの買えるだろうが」
「だよね。でも1円を笑うものは1円に泣くって言うんだよね」
「節約するのはいいことだがな」
ギイがいったいいくらこづかいを貰っているかは知らないけど、絶対にぼくたちよりは多いはずだと思う。
「ギイは?」
「んー、洗濯洗剤買うって言ってたけど」
じゃ行くか、と章三と2人して広い店内をギイを探して歩いた。
背が高くて、一際目立つ容貌をしているのですぐに見つけることができる。
「ギイ」
声をかけると、ギイは手にしていたものをひらりと振って見せた。
「これ見ろよ」
「・・・なに、それ」
「すごいな、最近の100均ってゴム売ってるって知ってたか?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「二個入りで100円。すごいコスパだよな」
いや、知らないし。
ていうか、何で100均でそんなもの売ってるんだよ!!
「これ、光るんだってさ。すごいなぁ」
「ギイ、僕は先に行ってるからな」
さっさとその場を離れる章三。
待って、と引き止める間もなく、行ってしまって、ぼくはギイと2人残されてしまった。
「託生、これ買ってみるか」
「・・・・やだ」
「何で?消耗品だし、必要だろ?」
そうかもしれないけど・・・
「100均のって、どうなんだろ」
質とかさ。すごくこだわりがあるわけじゃないけど、何となく・・さ。
「大丈夫。製造元はちゃんとした大手会社だから」
「ああ、そ」
意気揚々と籠にそれを入れて、ギイは鼻歌でも歌いだしそうな勢いでレジへと向かった。
誰かあの能天気な外国人を止めて欲しい。



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あとがき

100均にないものはない。