100均万歳


「ギイ、100均で買ったんだって?」
「・・・座った早々何の話だ」
食堂の片隅、前の席に座った矢倉が何やら楽しそうにオレを見る。
「赤池に聞いた。あいつ、めちゃくちゃ嫌そうな様子だったぜ。まぁあれだよな。その場にいる2人が使うのかーって思ったら、そりゃ嫌だろうな」
「矢倉、もしかして一つくれっていう話か?」
こいつには前科があるので、一応聞いてみる。100円なんだから自分で買えばいいだろうが、と思うのだが、学生の小遣い事情はシビアなのだ。すると矢倉はいやいや、と首を振った。
「ギイが買ったのって光るやつだろ?」
「珍しかったからなぁ」
「俺もそう思って買ってみたことあるんだ」
しれっと言う矢倉はがつがつと親子どんぶりを食べ始めた。
「100均のはやっぱり品質がよくない、とかそういうことか?」
聞くと、矢倉は苦笑した。
「そうじゃなくてさ、あれさ、ほんとに光るんだって。暗闇の中で、蛍光塗料なんだろうな」
「ああ、それが売りなんだろ?」
「ギイ、想像してみろって、光るんだぞ、アレが」
「・・・・」
「八津がもう爆笑でさ、腹抱えて笑い出しちまって、もうそんな色っぽい雰囲気じゃなくなって、結局何もできなかったんだ。まぁ客観的に見たら、けっこう笑えるよな。光ってるんだからな」
「アレが?」
「そう、アレが」
「・・・なるほど」
それはさすがの託生も爆笑かもしれない。
腹抱えて笑う託生というのも滅多にないので見てみたいとは思うが、アレ見て笑われたら、しばらく立ち直れないかもしれない。
「やめとく」
「そうしろ」
100均での買い物はすべてがお買い得というわけでもないらしい。
2個100円のアレ。
さて、誰に押し付けてみるべきか。



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あとがき

アレ見て笑われたらさすがのギイも萎える。