真夏になると、さすがの山奥祠堂でも気温が上がる。 「あっちーな」 そんな言葉が口から零れ、シャワーでも浴びるかと部屋の扉を開けた。 どうせ託生もぐったりしてるんだろうと思っていたのだが、予想通り、ベッドに横になっている託生はぐでぐでになっていた。 「あ、おかえり、ギイ」 「ただいま、って、暑いなぁ」 「暑いよ。もう溶けそう」 「大げささな、って言いたいとこだが、今日は確かに暑い」 ふと見ると、託生の前髪は上げられていて、見慣れぬクリップでとめられていた。 女の子がよく使っているあれだ。 「それ、どうしたんだ?」 「え?あーこれ?貰ったんだよ。便利だよね」 「・・・・」 それは、顔を洗うときとかに前髪を上げておくのに便利だとか、そういうことか? ていうか、普段見えない白い額って、妙に色っぽく見えるのは何でだろうな。 そういうのを見せるっていうのは何か意味があるのか?ああ? 3秒くらいの間にそんなことをフル回転で考えて、気づいた片足をベッドに乗り上げて、託生の額にちゅっとキスをしていた。 「なっ、何するんだよっ!!いきなりっ!!」 それまでぐったりしていた託生は真っ赤になって飛びのいた。 「何でそんなに驚くだよ。キスくらいいいだろ」 「キスくらいって・・っ!」 おまけにおでこにちゅーだぞ、挨拶みたいなもんだ。 もっとも、挨拶のつもりじゃないけどな。 そのまま汗の味がする胸元に唇をくっつけると、託生はぎゃーっと暴れた。 「暑いからやだっ!」 「・・・・確かに暑い」 真昼間からあれこれするには暑すぎる。 ああ、早く秋になってくれないものか。 |