滅多に不機嫌になることなんてないのだけれど、本当にたまにギイは静かに拗ねる時がある。 「ギイ?」 呼びかけても返事をしない。 「ギイってば、何怒ってるんだよ?」 「別に、怒ってなんかない」 「嘘ばっかり」 ぼくはギイの隣に座った。 「んー、お腹空いたとか?」 「オレは子供か」 「じゃあ、どこか痛い?」 「だから子供じゃない」 「眠いとか?」 ギイは呆れたようにぼくを見て、そしてやれやれというように肩を落とす。 「託生が・・・」 「ぼくが、なに?」 「さっき、オレがキスしようとしたら逃げただろ」 今度はぼくの方が呆れてしまう。 だって、ついさっきまで章三も一緒にいたのだ。 いくら見てないだろうからって、同じ部屋にいるのに、キスするなんてできるわけがない。 けれど、そんなぼくの常識は、ギイには通じやしないのだ。 「わかったよ、こっち向いて、ギイ」 しょうがないな、と笑いながら、ぼくはギイにキスをした。 そしてやっとギイは笑ってくれる。 子供じゃないなんて言うけれど、十分子供じゃないのかなと思うのだが、せっかく直してくれた機嫌を損なうのは嫌なので、ぼくは求められるままにギイからの甘い口づけを受けるのだった。 |