色気のかけら


当然といえば当然だけれど、クラスメイトたちと世間話をしている時の託生は色気の欠片も見えはしない。
片倉と話してる時なんか、中学生かと思うほどにあどけない。
今だって章三にからかわれてオモチャにされ、憤って頬を膨らませている様子は「可愛い」であって「色っぽい」とは程遠い。
昨夜、オレの腕の中で見せた表情と比べるとまったく別人だ。
いったいどっちの託生が本当の託生なのか分からなくなる。
「ギイったら、ぼんやりしてないで、ちょっとは赤池くんに言ってやってよ」
「何言ってる、葉山、だいたいお前が・・」
「あーもー、お前ら、さっきからうるさいぞ」
だいたいここはオレの部屋だっていうのに、2人してすっかり和んで、オレをそっちのけで楽しんでるんだからなー。
「託生、お前、今日も泊まってけ」
「え?無理だよ、そんなの・・」
オレのいきなりの言葉に、託生はうろたえる。昨夜だって泊まったのだ。
二日連続で三洲に点呼を頼むのは気が引けるのだろう。
「ということで、よろしくな、章三」
「何で僕が!!」
とたんに章三が異議を申し立てる。
だが、それでも帰りがけに270号室に寄ってくれるだろう。
「急にどうしたんだよ、ギイ」
章三が帰ったあと、託生がどこか居心地悪そうにオレを見上げる。
「いや、ちょっとなぁ・・・」
「?」
オレしか知らない託生の顔。
もしかしたらもっと他にもあるんじゃないか、なんて。
口にしたら絶対に嫌がられるから言わないけれど。
「託生に教えて欲しいことがあってさ」
「ぼくが、ギイに?」
「託生にしか教えてもらえないこと」
「・・・・?」
夜は長い。幸い明日は日曜日。時間はたっぷりある。
甘い口づけに目を閉じる託生をそっと抱き寄せた。


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あとがき

ギャップ萌えってやつっすよ。