「死ぬかと思った」 「大げさな」 ぐったりとベンチに座り込み、青い顔をしている託生に、ほらとギイが冷たい缶コーヒーを差し出す。 「葉山、お前怖がりすぎ。いい年した高校生がぎゃーぎゃーと」 章三はやや呆れ気味にペットボトルのキャップを開けた。 「だから嫌だって言っただろ!だいたいお化け屋敷なんて、どうして夏も終わったこの時期に入らなきゃならないんだよ」 この手のイベントからはできる限り遠ざかっていたというのに、日曜日に3人でふらりと覗いたショッピングモールの片隅でやっていたお化け屋敷最終日という看板に、ギイも章三ものりのりで入ろうと託生を誘った。そして半ば拉致されるように入場して、死ぬ思いをさせられた。 「あのゾンビ、絶対夢に出てくる」 託生は嫌だ嫌だと肩をすくめる。 「あれ、凄かったな、もっとチープかと思ってたら、けっこうちゃんとした特殊メイクだった」 「確かに。おまけにちゃんと追いかけてきた」 「だから怖かったんだろっ!!あー、だめだ、まだ心臓がドキドキ言ってる」 託生は涙目で火照った頬に手をやる。 「夜寝られなくなったら一緒に寝てやるからなー」 ギイがからかうと、とたんに章三からパンチが飛んでくる。 冗談だろ、なんて笑うギイだが、もしかしたら本当にお願いしないといけないかもしれないので、託生はそれには突っ込むことはしなかった。 |