酔った時くらいしか甘い睦言を交わしてくれない恋人なので、時々上手く丸め込んで、どんどん飲ませてみることがある。 ビールや日本酒じゃ酔わないので、今夜は滅多に飲まないウィスキーを飲ませてみた。 目論見どおり、託生は骨のない軟体動物みたいにくにゃくにゃとオレの肩に寄りかかり、やがてずるずると倒れこんで、今はオレの膝に頭を乗っけて気持ち良さそうに眠っている。 「飲ませすぎたか」 甘い睦言交わす前に眠ってしまうんだからなー。つまらん。 オレは一人でちびちびと残った酒を飲んでいた。 すると突然ぱちっと託生が目を開けた。 「ギイ?」 「うん?」 「・・・・」 「何だ。水か?」 テーブルの上からコップを引き寄せて、ほら、と飲ませてやる。 「あのさ、ギイ」 「眠いんだろ?ベッドに行くか?」 「うん」 うなづきながらも託生は動こうとしない。 「ギイ、どうしてぼくがしたいなぁって思うことが分かるの?不思議だな」 「そりゃまぁ長い付き合いだし、託生の考えてることくらい全部分かるさ」 「ふうん」 「何だよ」 「じゃあさ」 こてんと小首を傾げて、託生はオレをじっと見つめた。 「じゃあギイ、ぼくがギイのこと世界で一番好きだってことも知ってるの?」 「・・・・」 託生はまたぐらぐらとへたりこむようにしてオレの膝へと頭を乗せ、すうすうと眠ってしまった。 (やられた) さすがに酔っ払い相手に不埒なことはできないが、明日覚えてろよ。 もう何言ったって許してなんかやらないからな。 「うわ、オレ、今夜眠れるのかな」 天然すぎる恋人が恨めしい。 悶々とした気持ちを抱えつつ、オレは眠れぬ夜を過ごすハメになってしまった。 |