「あれ、ギイだったよな」 隣を歩く利久が不思議そうに首をかしげる。 寮の部屋の窓から、ギイがぼくたちを見ていた。 目が合うと、ギイは軽く手をあげてすぐに姿を消した。 挙動不審といえばそうだった。 「なぁ託生、ギイと上手くやってけそう?」 2年になり、寮の部屋替えがあって、ぼくは利久とは別の部屋になり、どういう運命のいたずらかギイと同室になった。 おまけに好きだなんて告白までされて、正直ぼくの許容量はいっぱいいっぱいだ。 「今も何か逃げるみたいに姿消しちゃったし、喧嘩なんてしてないよな」 「大丈夫だよ」 心配性の利久は、いつもぼくの心配をしてくれている。 「けどほんとに同室がギイでよかったよな」 「・・・うん」 よかった・・のだろうか。 密かに寄せていたギイへの想いは決して叶うはずのないものだった。 それなのに今、ギイはぼくのことを好きだといって、恋人になりたいと言うのだ。 (慣れない・・・) 整いすぎるくらいに整ったギイのことを、いつも気づかれないように見つめてた。 今はギイが正面から見つめてくる。 ぼくはその眼差しをどう受け止めればいいか分からなくて、うつむくばかりだ。 寮の部屋にはギイがいる。 どんな顔をして「ただいま」と言えばいいのか、鼓動が早くなるのを感じながら、ぼくはあれこれと考えるのだった。 |