クロスワード




「ギイ、アメリカの50番目の州ってどこ?」
「ハワイ」
「そうなんだ、えっと、ハ、ワ、イ・・と」
ベッドに腹ばいに寝転がった託生がふむふむとペンを走らせる。
「じゃあ、チェスの駒で、他の駒を飛び越えて移動できるのって何?」
「ナイト」
「へぇ、んーと、ナ、イ、ト・・・と」
「託生、ちょっとは自分で考えろよ」
「だって、ギイに聞いた方が早いんだもん」
「・・・」
早いだもん、てな。そんなんでやってて楽しいのか?と思ったが口にはしない。
「よし、できた」
さっきからせっせと解いていたクロスワードを、ようやく完成させた託生が身体を起こして、解答欄を埋めていく。
「オ、レ、イ・・・」
声を出して答えを読み上げていた託生が途中で口を閉ざす。
「託生、答えは何だった?」
「え、うん・・・」
口ごもる託生の手元からクロスワードの雑誌を取り上げる。
「ちょっとギイ!」
「何なに・・。オレイハタイセツ・・お礼は大切?」
「だね」
オレは雑誌を床へ放り投げると、託生の身体を引き寄せた。
「半分以上オレが答えてやったんだ。ちゃんとお礼してもらうかな」
「・・言うと思ったよ」
「お礼は大切、なんだろ?」
「まぁね」
しょうがないな、というように託生はオレの唇に小さくキスをする。
「ありがと、ギイ」
「どういたしまして」
まだ半分もできていないクロスワードの雑誌。
どうせこれからも、託生はオレにあれこれと聞いてくるに違いない。
「今度から答え一つにつき、キスひとつ、な」
「えー、ケチ臭いこと言うなよ、ギイ」
「どっちがだよ。まとめて夜に一括払いでもいいぞ」
「・・・10年後の出世払いとか?」
くすくす笑って託生がオレの腕から逃げようとする。
出世払いか。それもいいな。
10年後もこうして一緒にいるっていう約束になる。
「では出世払いということで」
予約の印、と言って口付けると、託生はくすぐったそうに小さく笑った。


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あとがき

10年後にはすごい利子がついてるに違いない