日曜日、ギイと一緒に麓の街へと出かけた。ちょっと買いたいものがあるというギイと別れて、ぼくは先にいつものカフェで一休みしていた。 よく冷えた寒い日だったので、同じように避難してきた人で店はいっぱいだった。 ぼくは連れが来るからと告げて、何とか二人席に着くことができた。 隣は女の子4人組で、何だかすごく楽しそうに話をしていた。 買ったばかりの小説本を広げていたけれど、嫌でも話は耳に入ってくる。 「しゃっくりって、100回続いたら死ぬでほんと?」 「まさかー」 「じゃあ、人間の心臓が一生のうちに脈打つ回数って決まってて、どきどきしすぎたら早く死ぬっていうのは?」 「えー。私、おばけ屋敷けっこう行ってるのに!早死にしたくなーい」 そしてまた楽しそうに笑う。 女の子って何話しても最後には笑うんだなぁと、ぼくは何だか感心してしまった。 しゃっくりなんて数えたことないなぁ、100回くらいしてそうだけど。 死因がしゃっくりですなんて聞いたことないから、まぁそれはないよな、とぼくは一人であれこれと考えていた。 「託生」 呼ばれて顔をあげると、ギイが立っていた。 今日は黒いコートにぼくがプレゼントした辛子色のマフラーをしている。 隣の女の子たちがぴたりと話をやめて、ギイにぼーっと見惚れている。 「待たせたな。オレもコーヒーにするかな」 ギイはいつものように周囲の視線なんて気にしてない風でぼくの前に座った。 「・・・・どうしよう」 「どうした?」 「しゃっくりが原因で死んだりはしないけど、どきどきが原因では死んじゃうかも」 「は?」 わけが分からんとギイが首を傾げる。 そして、変なヤツ、と楽しそうに笑った。 ああ、もう。 毎日見てる笑顔だというのに、やっぱりぼくはどきどきしてしまって仕方がない。 もしぼくが早死にしたら、それはきっとギイのせいだと思うのだ。 |