人気のコーヒーショップはいつも混んでいる。 オーダーの順番が回ってくるまでに何を注文するか考えていたけれど、結局決めきれなかった。 外はすごく寒くて絶対にホットにしようと思っていたけれど、店の中は暑いくらいでやっぱりアイスにしようかと思ったり。 「どうしよう」 さっさとホットコーヒーを注文した章三くんは、なかなか決められないでいる私の手を、ふいに握り締めた。 「な、なに?」 びっくりした顔をあげると、章三くんは、 「まだ手が冷たい。ホットのカフェラテにしてください」 私がうろたえている間に、さっさと注文をしてしまい、レジもすませてしまう。 店員さんがくすりと笑って私を見る。 「ちょっと!どうして勝手に注文しちゃうのよ」 「混んでるのに、さっさと決めないからだろ」 「だからって、恥ずかしいじゃないっ」 日ごろ、崎さんが葉山さんにあれこれと世話を焼いているのを見ては恥ずかしい真似をするな!と文句を言ってるくせに、自分だって同じようなことをしているっていう自覚はあるのかしら。 席について冷えた手を温めるようにしてカップを包みこんだ。 確かにホットにして良かったとは思うけど、涼しい顔をしてる章三くんを見てるとやっぱりちょっと納得できない、と思ってしまうのだった。 |