仕事を辞めたギイは今のところ暇で暇で仕方ないらしい。 「だからさ、暇なら働けばいいだろ」 「まぁなぁ」 ぜんぜん取り合う気配もなく、ギイはじーっと床を見ている。 いや、正確には床に散らばったジグソーパズルのピースを眺めている。 暇を持て余したギイは、昨日2000ピースのパズルを買ってきたのだ。 「とりあえずは色分けするか」 「ほんとにこんなの完成するのかなぁ。ぼくなんて一生かかっても無理っぽいよ」 「一生だなんて大げさだな」 「もしかしてギイ、一目見ただけでピースの形を全部覚えて、すぐにできちゃうってことはないよね?」 驚異的な記憶力を持つギイなので、そういう超人的なことが出来ると言われても信じてしまいそうだ。 「まさか」 「だよね」 「そんなことしたらすぐ完成しちまって面白くないだろ」 しれっと言ってギイは同じ色のピースを集めていく。 その言葉の意味が分かり、ぼくはやっぱりギイってタダモノじゃないと思った。 そうしようと思えばすぐに完成してしまうパズルをするくらいに暇なら、やっぱり仕事をするべきなのではないだろうか・・とも思うのだけれど、学生時代から働いていたギイのせっかくの休暇を邪魔するのはいかがなものか、とも思う。 「ねぇギイ、ぼくもちょっとやってみたい」 「じゃあ同じ色のピース集めたら、次は色の濃淡で分けてくれ」 ギイは何だか楽しそうに笑った。 こんな共同作業もちょっと楽しい。 ぼくはギイと肩を並べて小さなピースを一つ一つより分けていくのだった。 |