「あ、ちょっと待ってくれ、章三」 祠堂へと戻るバス停を目指す途中で足を止めた。 前を歩いていた章三が何だ、と振り返る。 「欲しいものがあるんだ」 「文房具?売店でも売ってるだろ」 「いや、売店じゃ売ってないんだ」 ふうん、と曖昧な相槌を打って、章三はオレのあとについてきた。 よくある街中の文房具店で、お目当てのものを探す。 「消しゴム?お前、それは売店で売ってるだろうが」 「んー、これじゃないとダメなんだよなぁ」 「トンボのMONOか。まぁよく消えるヤツだけどな。けど、ギイ、お前が使ってる消しゴムってそれじゃないだろ?」 訝しげな表情の章三に笑って、もう一つ同じ消しゴムを手に取った。 どうせならお揃いにしておくか。 レジを済ませると、別に頼んでもいないのに可愛らしい袋に入れてくれた。 自分の分は袋は断って、そのままポケットに突っ込んだ。 こんな小さな消しゴムでも、一緒のものを持っていると思うだけで嬉しくなる。 何で二つも買うんだ、と言いたげな章三の視線をはぐらかして、バス停へと向かう。 寮の部屋にいるだろう託生が喜ぶ顔を想像すると、それだけでうっかり笑みが零れてしまう。 プレゼントは相手だけじゃなくて自分自身も幸せになれるんだな、と今さらのように思った。 |