普段からちゃんと掃除しておけばいいんだろうけど、なかなか本格的な掃除ってできないもので、年末も押し迫ったこの日、ギイとぼくは一念発起して朝から大掃除をしていた。 もっとも男二人の生活ではそんなに汚れたりもしないので、一番汚れてる台所と風呂場を集中的に。あとは不用品などをまとめてゴミ袋へと放り込んでいった。 「あれ、何だろうこれ。どこのリモコン?」 クーラーでもないし、テレビでもない。こんなリモコンあったっけ? 「ねぇギイ、これって何の・・・って、ギイってば、何真剣に雑誌なんて読んでるんだよ!」 それ、捨てるはずの雑誌では? ああ、もうお約束の中断状況ではないか。 「なぁ託生、この店すっごく美味そう。今度行こうか」 「・・・何の店?」 「鉄板焼き。海鮮専門」 「うわー。美味しそう」 思わずぼくはギイの隣にしゃがみこんで、手元の雑誌を覗き込んだ。 美味しそうな写真がたくさん載っていて、ギイが言う通りとても美味しそうだった。 「正月いつからやってるんだろう」 「あとで電話してみるか」 「それもいいんだけど、ギイ、真面目に掃除しようよ。今日中に終わらなくなっちゃうよ?」 「しかしなぁ、託生、どうして年末の寒い時に頑張って掃除をしなくちゃならないんだろう。どうせならもうちょっと暖かい4月とかさ、気候のいい時に・・」 「はいはい、じゃあ来年はGWに大掃除をするってことで。ほら、いらない雑誌をまとめてよ」 「はいはい」 ギイは鉄板焼きの店が載ったページをぺりぺりと破ると、ようやく掃除へと戻ってくれた。 こんなやり取りを毎年しているような気がするんだけど、気のせいだろうか。 毎年恒例の・・・と二人の間でなっていくイベントが増えるのは、それが何であれちょっと嬉しかったりもする。 何はともあれ今年も一年、ギイと無事に過ごせてよかった。 来年こそは、早めに掃除を終わらせて、年末には豪華な鉄板焼きが食べられるといいなぁと、ぼくはせっせと雑誌をまとめるギイを見ながら思うのだった。 |