超がつくほどのストレートの章三に、託生に惚れていることがバレた。 別にあらたまって告白したわけではないのだが、勘のいい章三のことだから、オレの言動から推測し、確信したのだろう。 どうせいつまでも隠し通せるとも思っていなかったので、このタイミングでバレたのは良かったのかもしれない。 「葉山のために野崎なんかの挑発に乗るなんて、どうかしてる」 「そうかもな。だけど、ここで引くわけにはいかないんだ」 運動部の野崎と競うなんて、確かにどうかしている。 勝算なんてまったくないし。 だけどこの勝負には負けるわけにはいかない。 「章三だって、同じ立場なら同じことしただろ」 「・・・そりゃまぁそうかもしれないが」 少しの逡巡のあと、渋々と認めた章三に、ほらな、と笑った。 どう考えても無茶なことでも、好きな相手のためだと思えば逃げるわけにはいかないのだ。 「野崎なんかに指一本触れさせない」 「じゃあせいぜい練習することだな。お前、瞬発力はあるけど持久力はないだろ」 「そうなんだよなぁ、章三、これから毎日練習付き合ってくれよ」 「冗談じゃない。言っておくが、僕はギイと葉山の仲を応援する気はないんだからな」 「それはどうかなぁ」 人間接触嫌悪症を克服しつつある託生は、去年までの頑なな態度が嘘のようにあどけない笑顔を見せるようになった。 章三も文句を言いながらも何だかんだと託生にかまっている。 結局章三だって託生のことを気に入っているのだ。 「章三が味方でいてくれると心強い」 「だから応援はしないって」 「まぁまぁ」 「何がまぁまぁだ!人の話を聞け!」 そんな風に文句を言っていた章三だが、結局託生と一緒に最後の一周を走ってくれた。 その姿を目にした時に、きっと章三はこの先もオレと託生の味方でいてくれるんだろうなと確信した。 そして大人になってもいい相棒でいてくれるんだろうな、ということも。 |