腕を伸ばすと、そこにいるはずの託生がいない。 サイドテーブルに置いてあった時計を確認すると、まだ7時になったところだ。 今日は休日だし特に予定もないし、寝坊の託生は絶対にこんな時間に起きるはずがない。 トイレにでも行ったのかな、と思いながら起き上がる。 「ん?」 昨日脱ぎ捨てたはずの服がない。お気に入りのパーカー。 もしかして託生が早起きをして洗濯でもしているのかもしれない、とベッドを出た。 とりあえず半袖のシャツを着たものの、すっかり秋の気配が漂っていて、朝の空気はずいぶんと冷たくなっていて肌寒い。 「託生?」 リビングの扉を開けると、託生はキッチンに立ちマグカップを両手で持っていた。 「おはよう、ギイ。早いね」 「早いのは託生だろ。どうしたんだよ、こんな早くに・・・」 見ると託生はオレのお気に入りのパーカーをしっかりと着込んでいる。 厚手で暖かくて着心地のいいヤツ。 「あ、ごめんごめん、ちょっと借りた」 屈託なく笑う託生に思わずその場にしゃがみ込んだ。 何だっけ、彼シャツ?いや彼パーカーで、萌え袖とか、どういうことだ。 おまけに寝ぐせだらけで隙だらけで可愛すぎるじゃないか。 「くそー」 「なに、どうしたの?」 すくっと立ち上がり、そのまま託生の手首を掴む。 「え?」 「ベッドに戻る。可愛いカッコしてオレの前に出てきた託生が悪いんだからな」 朝からいちゃこらするのはあまり好きではない託生だと知ってはいるが、そんなカッコで誘ったのが悪い。 もちろんベッドに戻ってから託生は盛大に文句を言ったが、何しろ休日なので最後の最後はいちゃこらした。 お気に入りのパーカーは託生にプレゼントした。 突然のプレゼントに託生は首を傾げていたが、個人的理由で、とだけ言っておいた。 |