「託生、ちょっと見てみろよ」 呼ばれて窓辺に立つギイの隣へと足を向けた。 「うわー、大きなお月さまだね。月見っぽい」 寮の部屋の窓から二人並んで空を見上げる。 もう3月も終わり、世間ではもうすっかり春だと言うが、山奥祠堂ではまだ夜の空気は冴え冴えと冷たい。 「満月?」 「ブルームーンだよ。普通は2年半に1度くらいみることができるんだ」 「へぇ、じゃあ今こうしてギイと一緒に見られるのはすごく貴重なことなんだね」 「そうだなー。あ、ブルームーンを見ると幸せになるって言われてるんだ」 「そうなんだ。じゃあギイと一緒に幸せになれるのかなぁ」 当たり前だろ、とギイは呆れたようにぼくの肩をどんと押す。 「絶対に幸せになるよ、決まってるだろ」 「決まってるんだ?」 思わず笑うと、ギイはもう一度「決まってる」と小さく言って、眩しそうに空に浮かぶ月を見上げた。 うん、決まってるよね、とぼくも言って、ギイと同じように大きくて綺麗なブルームーンを眺めるのだった。 |