大学から家に帰ると、ダイニングテーブルの上に、どんと見慣れぬマシンがあった。 「何だろう、これ」 朝出かける時になかった、と思う。 いったいこれは何だろう。 エスプレッソマシン・・・かな? いやでもちょっと違うような気がする。 ぼくがまじまじとその機械を眺めていると、ひょっこりとギイが顔を覗かせた。 「よ、おかえり、託生」 「ただいま・・・ねぇギイ、これ何?」 「何だと思う?」 子供みたいにわくわくした表情をしているギイを見るのは久しぶりだ。 こういうところ、昔っから変わらないなぁと嬉しくなる。 「エスプレッソマシンかなって思ったんだけど」 「残念。これはアイスクリームマシンだよ」 「え、アイスクリーム??」 アイスクリームってあのアイスクリーム??? 「店で売ってるようなあのくるくる巻いたソフトクリームができるんだ。すごいだろ?」 「うーん、まぁすごい、けど。どうしたの、これ?」 まさか買ったんじゃないだろうな、とぼくが言うと、ギイはまさかと笑った。 「知り合いに頼んでちょっと借りたんだよ。あのくるくるしたやつ、自分で作ってみたかったからさ」 「そうなんだ」 「何だよ、テンション低いなー」 「だって」 「まぁ託生は甘いものそれほど好きじゃないもんなー」 「でもソフトクリームは食べるよ。ギイ、作ってくれるんだろ?」 がっかりさせたくなくて慌ててそう言うと、ギイはもちろんとうなづいた。 そう言えば小さい頃はソフトクリームを上手に作れるお店の人ってすごいなーと思ったものだ。 いそいそとソフトクリームを作る準備を始めるギイは、きっと失敗することなく上手に作ってくれるんだろう。 甘いものがそれほど好きじゃないぼくでも、ギイが作ってくれたソフトクリームならまた食べたいって思うに違いない。 |