祠堂を卒業してから遠距離恋愛が続いているギイは、時間を見つけてはこまめに日本に来てくれる。学生のぼくからすればありがたいことだけど、何だか申し訳なくも感じてしまう。 「そんなの気にすることないのに」 「だって」 居酒屋で軽くご飯にしよう、と誘われて、賑わう店内の一角でビールで乾杯した。 ギイと居酒屋というのが最初はどうにも似合わないと思っていたけれど、実際には不思議とその場の雰囲気に馴染んでいる。 「今のところ、オレの方が自由がきくんだしさ。何がそんなに気に入らないんだよ」 「別に気に入らないってことじゃなくて、そりゃギイはもう学生じゃないし、収入もあるから無理してるとは思ってないけど、だって、何だかぼくの方が愛情薄いみたいでちょっと不本意っていうか」 「・・・」 「ぼくだってギイに会いたいっていつも思ってるんだし」 だけど簡単には会いに行けない。アメリカってやっぱり遠いのだ。 どっちが会いに行くかなんて大した問題じゃないかもしれないけれど、でもやっぱりちょっとは気になってしまうのだ。 ギイは何故だか急にご機嫌になって、追加でぼくの好きなメニューをオーダーした。 「ギイ、そんなに食べられないよ」 「まぁまぁ遠慮するなって」 「するよ」 祠堂を卒業してもう数年たつけれど、たぶん交わしている会話はあの頃と何も変わっていないような気がする。 それはきっと相手のことを好きだという気持ちが変わらないからなんだろうなと思う。 「いや、オレの託生への愛は増えていってる」 「え、そうなの?」 「お前、そこはぼくもそうだよって言うところじゃないのか?」 呆れるギイも昔のままだ。 やっぱりぼくたちはあの頃から何も変わってないんだと思う。 |