午後を過ぎた頃にやってきた大型の台風は、夜になるとピークを過ぎて涼やかな風へと変わった。 「すごかったなー」 寮の窓を開け放して、ギイが夜空を見上げる。 少し前まで窓ガラスが割れるんじゃないかというくらいの暴風雨で、何度か停電もしたので、本当に大丈夫なのかと託生はドキドキしていたのだ。 ギイはむしろ楽しそうで、荒れに荒れている外を眺めては、しきりに台風の威力に感心していた。 「ギイ、アメリカでも台風あるんだろ?」 「ハリケーンな、来るとなったらさっきの台風の比じゃないけどな」 「寮が吹き飛ばされるんじゃないかと気が気じゃなかったよ」 託生が言うと、ギイは楽しそうに笑った。 「確かに祠堂の建物は古いから、屋根の一つや二つは・・・」 と言いかけて、くるりと踵を返して扉へと向かった。 「え、ちょっとギイ、どこ行くんだよ・・・」 「被害状況見てくる」 どこか嬉々としてギイが部屋を出て行った。 あれは級長としての責任というよりも、どちらかというと単なる野次馬根性というか興味本位というか。 絶対に章三を誘うに違いない。 「ほんと元気だなぁ」 どうせ明日になればゴミだらけになった校内を一斉清掃させられるのに。 まだ消灯には時間があるけれど、託生は一足先に寝ようとベッドに潜り込んだ。 学校内の被害が気にならないわけではないが、校内放送がかかっていないのだから大きな問題はなかったのだろう。 きっと部屋に戻ってきたらギイはあれこれと報告したがるに違いない。 その前に寝てしまおう。 だんだんとギイのことが分かってきている託生なのであった。 |