サプライズハロウィン


今年のハロウィンは平和である。
サプライズ好きのギイのおかげで、毎年何かしらのイベントがあったのだけれど、今年は大人しく家でまったりしようか、ということになったのだ。
「いったいどうしちゃったんだろうね」
あんこの散歩で30分ほど近所を回っての帰り道である。
「もしかしてどこか具合でも悪いのかな」
いや、元気そうだったよな。うん。
まぁいい大人が毎回仮装ばかりもしてられないので、ギイと二人でゆっくりできるならそれに越したことはないのだけれど。
「ただいまー」
玄関先であんこの足を拭いてリビングへと向かう。
扉を開けた瞬間、視界に飛び込んできた人影にぎょっと立ちすくんだ。
ギイだけがいるはずだったそこには、章三、矢倉、八津、政貴といったいつものメンバーと共に、
「利久!!!」
地元に戻ってしまって、一年に一度会えるか会えないかの利久がいた。
何だろうこれは。夢でも見ているのだろうか。
「おーい、託生ー、大丈夫か?おーい」
あまりの驚きで動けないでいるぼくに、利久がひらひらと手を振る。
「利久・・だって、ほんとに?」
「ほんとだって。ギイがハロウィンに合わせて遊びにこないかって誘ってくれてさー。託生に会いたかったし、来ちゃったよ」
相変わらずの人のいい笑顔。祠堂を卒業して、滅多に会えなくなったけれど、それでもずっと利久はぼくの親友だった。
まさか会えるなんて。
ぼくは章三たちと一緒にいたずらっぽい瞳でぼくを見つめるギイに、やられたと思った。
たぶんギイは、ずいぶん前からこの日のためにあちこちに連絡を取って、この集まりを画策していたのだろう。
今年は二人でゆっくりしようだなんて嘘をついて。
ぼくを驚かせるために。
そしてぼくを喜ばせるために。
「さ、託生、みんな腹ペコなんだ。早くご飯にしよう」
どうやら散歩に出ている間に、章三があらかたの準備をしてくれていたようだ。
「葉山、手伝ってくれ」
「うん」
久しぶりに賑やかな夕食になりそうで、何だか高校時代を思い出す。
食堂でみんなで一緒にご飯を食べた楽しかった日々。
「ギイ」
「うん?」
「ありがとう」
「サプライズ成功した?」
「うん」
よしっと小さくガッツポーズをするギイは昔のままで、ぼくは来年こそはギイを驚かすことのできるサプライズを用意しなくちゃな、と心に決めた。



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あとがき

利久とは会えなくてもずっと親友でいてほしい