「最近よく聞かれるんだよね、葉山さん恋人いるんですかって」 「ほお」 葉山の口から聞くとどうも自慢話には聞こえないから不思議だ。 「で、どう答えるんだ?」 僕が聞くと、葉山はうーんと唸った。 「いるって言うのも、いないって言うのもちょっと違うような気がして」 「いないって言えばいいだろ?ギイから何の連絡もないんだろ?」 わざと突き放したように言うと、葉山は少しばかり傷ついたような表情を見せた。 ギイがいきなり姿を消してからもう半年以上。 何の連絡もしてこない恋人のことなんて、もういい加減忘れた方がいいと何度葉山に言ったか分からない。 その都度、葉山は困ったように笑うばかりだ。 忘れられないことは知っている。 まだギイのことを愛してることもちゃんと分かってる。 馬鹿みたいに葉山のことを愛していたギイのことだから、もしかしたらとも思う。 思う反面、あのギイがこんなに長い時間何の連絡もないなんて、とも思う。 「・・・いりますって言えばいいんだってさ」 「え?」 葉山はきょとんと僕を見た。 「奈美が言うには、恋人いるんですか?って聞かれたら、要りますって言えば嘘にはならないって。恋人は必要ですって意味になるだろ?恋人がいてもいなくてもどっちにでも使える」 「ああ、なるほど。そっか。奈美子ちゃん賢いなぁ」 もっとも、要りますと答えたら、じゃあ私はどうですか、と返される恐れもあるのだが。 「葉山、誰かと付き合ってみたらどうだ?」 「・・・・好きな人がいますから」 僕はやれやれと肩をすくめる。 恋人がいますからとは言えず、でも照れたように言う葉山に胸が痛んだ。 やっぱり次にギイに会ったら一発殴らないわけにはいかないと思った。 |