個室でお願いします


ギイと章三と3人で食事をした。
章三の誕生日祝いを兼ねたレストランで振舞われたのは海鮮料理だった。
「うわー、これ伊勢海老?」
「ロブスターだな。すごい豪勢だな」
章三が冷静に訂正して、運ばれてきたロブスターに目を輝かせる。
「お祝いだからな。今日はいいロブスターが入ってるって聞いたから」
ぱちんと優雅にウィンクなどして、ギイもまた目の前のロブスターを満足そうに眺める。
「でも、これ、どうやって食べるの?」
ぼくは素朴な疑問を投げかけた。
綺麗に身が取られているわけではなく、それは本当に丸々1匹が皿にどーんと乗っていたのだ。
「ちょっと面倒だけど、案外と簡単だぜ」
剥き方を教えてやるよ、と言う章三に、ギイが待ったをかける。
「何だよ、ギイ。自分が教えるから、とかおかしなヤキモチ妬いてるんじゃないだろうな」
嫌そうに眉をしかめる章三に、そうじゃないとギイが笑う。
そしてあっという間に自分の皿に乗ったロブスターを綺麗に剥くと、ギイはぷりんとボイルされた身を指でつまんで託生の口元へと運んだ。
「ほら、託生、口開けて」
「・・・・」
極上の笑顔で促され、ぼくは思わずぱくりと口にした。
「美味いだろ?」
「・・・うん、美味しい」
そうかそうか、とギイが託生のロブスターにも手を伸ばす。
「ちょっと待て、ギイ」
「何だよ、章三」
「お前、まさか葉山に自分の手で食べさせたいから、剥き方を教えないと言うつもりか?」
「さすが章三、オレのことよく分かってるよなぁ」
「感心するな!!!葉山、自分の分は自分で剥け!そして自分で食べろ!ギイに食べさせてもらったりするんじゃない!」」
言われなくてもそうします。
こっ恥ずかしいことを堂々とするギイ。
ここが個室でよかった、とぼくはしみじみとを思った。



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あとがき

いつまでたっても、章三は二人の小姑ぽくていいわ。