朝はばたばたと忙しい。 特に寝坊なんてしたらそりゃもう大変だ。 「ギイ、ハンカチ持った??」 「持った」 「時計は?」 「してる」 「今日の帰りに予約してたCD・・」 「貰ってくる」 スーツの上着を手にして、ネクタイを閉めながら玄関へと向かう。 ぼくもそのあとを追いかけながら、もう忘れモノはなかったかなとぐるぐると考える。 玄関先で靴を履いていたギイは、ふいに「あ」と顔を上げた。 「なに?何か忘れモノ?」 「充電忘れた」 え、スマホの?今からじゃ間に合わないよと慌てる託生を、ギイがぎゅうっと抱きしめた。 「充電」 「・・・なにそれ」 思わず笑って、だけど同じ強さで抱きしめ返す。 ばたばたと忙しい朝の、ほんの一時の幸せの時間。 |