日曜日の朝



日曜日の朝は、早起きのギイが朝食を作ってくれる。

朝食というには少し遅すぎる時間にベッドから出たぼくを待っていたのは、ダイニングテーブルに向かって新聞を熱心に読んでいるギイだった。
「おはよう、託生」
「おはよ。寝過ごしちゃったよ」
「まぁたまの休みだし」
読みかけの新聞をたたんで、ギイがキッチンへと向かう。
「あれ、ギイまだ朝ご飯食べてないの?」
「託生と一緒に食べようと思ってさ」
「え、起こしてくれればいいのに」
食いしん坊のギイを待たせていたなんて、恐ろしい話だ。
「今日の朝食はムイエットな」
「ムイエット?」
聞きなれない料理名にぼくは首を傾げる。
「フランスの定番朝食。じいさんの家に遊びに行った時とか、よく食べててちょっと食べたくなったんだよな」
「へぇ」
ギイはフランス人の血の混じるクォーターだ。かといってフランス料理が大好きかというとそんなこともなくて、どちらかというと和食大好き人間だ。
「はいどうぞ」
バケットと半熟卵。サラダもついてる。それほど特別な料理ではなくて、ごくごく普通の朝食っぽい。
「あれだな、日本でいうところの卵がけご飯みたいな感じかな。パンを卵につけて食べるんだ。ちょっと甘いジャムも用意しておいたから」
「美味しそう」
そしてそれは実際美味しかった。思わずもりもりと食べてしまう。
ほんとギイは何でもできる人だ。
ぼくは料理は相変らず上達の気配はないので、何だか申し訳ない気もする。
そう言うと、ギイは軽く肩をすくめた。
「託生が美味しそうに食べてくれるから作り甲斐がある」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
素直にありがと、と言って甘えていいものか。
たまにはぼくもギイのために朝食を作らないとな。
胃袋を掴むってこういうことを言うんだなとしみじみと思う朝だった。




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あとがき

胃袋掴むのは基本中の基本。