ギイが英語が堪能だってことはもちろん知っている。 といっても、それは「アメリカ人なんだから当然」という勝手な思い込み?でもあった。 だって、ギイが英語を話しているところは見たことがないから。 そりゃ英語の授業で、たまに教科書を読まされることもあるけど、そういうのって普通に上手な人はけっこういるのだ。 何しろ祠堂はお坊ちゃん学校なので、小さい頃から英才教育を受けている人も多い。 決められた文章を読むなんてお手の物なのだ。 だけど英語が話せるっていうのはそういうことじゃなくて、日常会話ができないと話せるとは言えないだろう。 だから、休みの日に街でギイが英語を話すを初めて聞いた時は、何だかとっても驚いてしまった。 「何だよ、託生、そんなまじまじをオレを見て」 通りがかりの外国人に声をかけられたギイは別に身構えるでもなく、さらりと相手をして、何やら困っていたらしき外国人は、嬉しそうに軽く手を上げてその場を去った。 「ギイって、やっぱり英語話せるんだね」 「やっぱりって・・・何だよ、もしかして疑われてた?何ちゃってアメリカ人とか?」 「だってギイ、日本語上手・・っていうか、普通に話すから、英語を話すところを想像できなかったんだよね」 「ふうん、で、どうだった?」 「どうって?」 「英語話してるギイくんカッコいい!とか思った?」 ギイは長身を屈めて、ぼくの顔を覗き込む。 キラキラと太陽の光を反射するような薄茶の髪に思わず見惚れる。 「・・・別に」 「何だよ、別にって」 「ギイは英語を話してなくてもカッコいいだろ」 がっくりと肩を落とすギイから視線を逸らして、早口で言い切った。 一瞬ぽかんとしたギイはすぐに照れたように笑った。 惚れた欲目・・だけじゃなくて、ほんとにそう思っちゃってる。 見た目とか、何々ができるから、とかじゃなくて。 ギイはぼくにとってはいつでもカッコいい人なのだ。 |