イケメンオーラ



出かける時はマスクを忘れずに。
できるだけ家にいるようにはしているけれど、それでも食料品を買いに行く必要も出てくるわけで、週に一回ほどは近所のスーパーへ買い出しへ行く。
「託生、必要なもの書いてきた?」
「うん。ぱぱっと買って早く帰ろう」
新型のウィルスが流行っているというので、すごく気をつけている。
ぼくもギイも家を出る時からちゃんとマスクをしているのだけれど、普段つけ慣れてないから、どうももぞもぞしてしまう。
カートに籠を乗せて、ギイは足早に目当ての売り場へと歩いていく。
普段もたまに一緒に買い物に行くんだけど、ギイはとにかく目立つので、いつもスーパーに来ると奥様方の注目の的なのだ。
今日はさすがにマスクをしているので、大丈夫かなと思っていたけれど、やっぱりいつもと同じように、ちらちらとギイを見る人の何と多いことか。
「ギイってば」
「うん?」
肉の良しあしを真剣に吟味しているギイは周囲からの視線なんてまったく気にしてない。
「マスクしてるのに」
「何だって?」
「やっぱりマスクくらいでは隠しきれないのかな。イケメンオーラって」
「何だそれ」
マスク越しでも、ギイが笑ったのが分かる。
今さらギイがモテても、ヤキモチ妬いたりもしないけど、マスクしてても!っていうのにはさすがにちょっと驚いてしまう。
「よし託生、いい肉があるから今日はしゃぶしゃぶにしよう」
「昨日も肉だったのに」
「まぁまぁ、オレが作るからさ」
必要なものを素早く購入。そしてさっさと家に帰る。
もちろんウィルスを避けるため。
決してヤキモチからではない。
と、自分に言い聞かせてしまうあたり、まだまだぼくも大人になりきてないなと思ったりもする。




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あとがき

ギイのオーラは半端ない