「託生、お前、ちょっと痩せた?」 朝、制服に着替えている最中、背後からギイに声をかけられた。 「え?そんなことないと思うけど、どうして?」 ギイが少し考えたあとにぽつりと言った言葉にぼくは固まった。 「どうした葉山、ギイと喧嘩でもしたか?」 食堂で、ぼくが一言もギイと口をきかないことに気づいた章三が声をかけてきた。 ぼくは隣に座るギイをちらりと見て、だけどぷいっと横を向いた。 「章三、託生はご機嫌斜めなんだ、ちょっかいかけるな」 「めずらしいな。葉山がご立腹とは。ギイ、何したんだ?」 「いや、別に」 とか言いながら、ギイがニヤニヤ笑いながらぼくを見る。 ついさっき、305号室で、痩せたんじゃないか?とぼくに聞いたギイは、その理由を尋ねたぼくにこう言った。 『昨夜、託生が上になった時にちょっと軽くなったかなーって思ったから』 一瞬後にその意味が分かったぼくは、あまりの恥ずかしさに言葉を失った。 ギイの羞恥心の無さは今に始まったことじゃないし、そろそろ慣れたと思ってたけど、やっぱり時々ついていけなくなる。 (国民性?それとも性格?恥ずかしがるぼくの方が間違ってる???) あれこれと考えてはみても、答えが出るはずもなく。 とりあえずギイに反省を促すために、今日一日はギイとは口をきかない、と決めたのだった。 |