「あ・・・っつい・・・」 山奥祠堂は夏でも麓に比べれば涼しい方だけれど、それでもやっぱり暑い。 原因はもちろんギイである。 寝るときは確かに別々だったのに、朝目覚めると何故かギイが隣にいた。 それもぺったりとぼくにくっついて。 「ギイ、暑いよ・・・」 背中から長い腕を回して、ギイはぼくの首筋に顔を埋めている。 これで暑くないはずがない。 「んー。おはよ、託生」 「おはよう・・・じゃなくて!どうしてぼくのベッドにいるのさ!」 「そりゃお前、オレがお前の恋人だから」 「何それ、理由になってない」 「なってるよ。恋人だから一緒に寝てるんだろ?お前、ただの友達でこんなことしないだろうが」 寝ぼけていても理路整然と言ってのけるギイに反論する気にもならない。 ギイの腕から逃れようとするぼくを、ギイはさらに強く抱きしめた。 「もー、ギイ、暑いってば」 「夏だからな」 しれっと言うギイの手の甲をぎゅっと摘んでやる。 「いてっ、凶暴な恋人だなぁ」 笑ってギイが腕を解く。 解いたはいいけど、身体を起こしたぼくの手を取って、離そうとしない。 「おはようのキスしてくれきゃ離さない」 どこまでも甘えたことを言うギイに、笑いが込み上げた。 「ギイって時々子供みたいになるよね」 こんな我侭で子供っぽいギイを、たぶん祠堂の誰も知らないだろう。 ぼくにだけ見せるギイの子供っぽい一面だ。 「キスくらいいくらでもしてあげるけど、ギイ、これからもっと暑くなるんだから知らない間にくっつくのはやめて」 「じゃあ、ちゃんと声かければいい?」 「声かけるとかそういう問題じゃ・・・」 ない、と言うより早く、ギイがぼくの手を強く引いてキスをした。 これから夏本番。 毎朝こんなやり取りが繰り返されるのかと思うと、何だかさらに暑くなるような気がして、ぼくは深々とため息をつくのだった。 |