使い道



「高級外車、買うかな」と矢倉。
「自分の希望を満載した家を建てる」と章三。
「豪華なオーケストラを編成してみたい」と政貴。
「個人の天文台を作る!」と高林。

で、葉山は?と聞かれて、ぼくは首をひねる。
「うーん、貯金?」
というと、
「つまんねーヤツ!!」
と大ブーイングだった。
そこへやってきたギイが、
「何だよ、楽しそうだな。オレも混ぜろ」
とぼくの隣に腰をおろした。
けれど、誰もがギイを一瞥しただけで軽く肩をすくめるだけだ。
「ギイはいいよ」
「そうだな」
「だね」
「あ、何だ、仲間はずれか?何の話だよ、託生」
とたんに不機嫌になったギイがぼくの顔をのぞきこむ。
「あー、うん、宝くじで1億円当たったらどうする?って話だよ」
1億円が当たることなんて、まぁ絶対にないであろうが、誰でも一度は妄想する。
でもギイの場合、宝くじなんか買わなくても1億円を簡単に手にしそうだし。
あまりに現実味をおびそうなので、聞きたくないっていうか。
たぶんみんなもそうなんだろう。
けれど、ギイは腕を組んで思案し始めた。
「へぇ、宝くじかー、そうだなぁもし当たったら・・」
ギイがいったいどんな野望(?)を抱いているのか、みんな興味津々で聞き耳を立てる。
「確か宇宙旅行が1人2000万くらいだったよな、2人で4000万、準備に かかる費用を考えて、まぁ5000万か。残った金で新居買ったら終わりだな。 そう考えると意外と1億ってすぐに使いきってしまうよなー」
「宇宙旅行??」
とんでもない使い道にみんながきょとんとする。
「いや、宇宙旅行っていうか新婚旅行?託生、新婚旅行は宇宙がいいよなー」
どこまでもお気楽な台詞に、みんながうんざりとぼくを見る。
ていうか!!!
何で新婚旅行!!!
何で宇宙!!
絶対行かないから!
「葉山、ちゃんとギイを躾けろって何度言わせる」
章三がじろりとぼくを睨む。
だから、そんなの無理なんだってば!



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あとがき

宝くじ当たらなくてもギイなら行けそうだ。