「お、こんなところにこんなものが」 オレのベッドで遠慮の欠片もなくごろごろしていた矢倉がほら、と小さな包みを 指に挟んでオレへと差し出した。 どこかしてやったりという顔の矢倉に、ふんと鼻を鳴らす。 「そんなもん別に珍しくも何ともないだろ」 お前だって使ってるだろうが、と暗に匂わす。 「ちゃんと使ってるんだなー」 「当たり前だろ。常識だし、相手に対する礼儀だろ」 矢倉の指から包みを取り返して、引き出しに仕舞う。 珍しくもないものだけれど、持ち物検査で見つかったりするとやっぱりまずかったり するのだろうか。 恋人を持つ身としては必須アイテムだとは思うのだが。 「なぁ、それ、けっこうイイ?」 「・・・・悪くない」 「ふうん、それ、葉山も同意見?」 オレは閉じたばかりの引き出しを開けて、たった今仕舞ったばかりの包みを 矢倉へと放り投げた。 「やるから試してみればいいだろ、で、八津に感想を聞けばいい」 間違っても託生に聞いたりするなよ、と視線で釘を刺すと、矢倉は分かってるというように 頷いてみせた。 「じゃ早速試してみるかなー、サンキュ、ギイ」 矢倉はどこか意気揚々とゼロ番をあとにした。 「しまった」 そういえば、あれが最後の一個だったということに気づいてしまった。 「矢倉、覚えておけよ」 明日は託生がお泊まりにやってくるというのに、どうしてくれるんだ。 常識と礼儀を忘れてみたいと言ってみるか? さて、託生はどんな反応をするだろうか。 |