寮の305号室に戻ると、ギイがベットでぐっすりと眠っていた。 ぼくは一瞬、倒れてるんじゃないかと思ってどきりとした。 だって、ギイは睡眠時間が短くても全然平気な人なので、まだ日も高いこんな時間にベッドに横になっていることなんて、まずあり得ないのだ。 「ギイ?」 そっと近づいて、思わず息をしているか確かめる。安らかな寝息にほっとして、ぼくは手にしてたテキストをそっと机の上に置いた。 人の気配に敏感なギイが目覚めないということは、ほんとに熟睡してるということだ。 「疲れてるんだろうなぁ」 口では他人のことには不干渉と言いながらも、結局放っておけなくて、あちこちから頼まれごとをされては動いているギイ。優しいんだよね、本人はあんまり認めたがらないけど。 「う・・ん・・・」 ギイが低く唸って目を開けた。 ぼくを見て、きょとんとする様子が子供みたいで、つい吹き出してしまった。 「託生・・帰ってたのか」 「うん。ギイが昼寝するなんて珍しいね」 「あー、どうにも眠くてちょっとだけ寝ようと思ったら・・・」 まだ眠いらしくて若干呂律が回ってない。 ほんと、こんなギイを見られるなんて、明日は雨でも降るんじゃないだろうか。 「託生、一緒に寝る?」 おいでおいでと手招きされるが、残念ながらというべきか、ぼくはぜんぜん眠くないのだ。 「あんまり昼寝しすぎると夜眠れなくなるよ」 ベッドに腰掛けて、ぼんやりと寝ぼけた顔をしているギイを覗き込む。 「そうだなぁ、ま、眠れなかったら託生といちゃいちゃできるからいいけどな」 「ぼくは夜は眠くなるから寝ちゃうけどね」 「お前、冷たすぎ」 はーっとわざとらしくため息をついて、ギイがぼくの手をひく。 「やっぱり一緒に昼寝しよう。そして、夜いちゃいちゃしよう」 「えー、そんな無茶な」 眠くもないのに、無理やり昼寝に誘われて、ぼくはギイの隣に横になる。 「もう、我侭だなぁ、ギイ」 「じゃ今する?」 ニヤニヤと笑われて、ぼくはギイの脇腹に拳を入れる。 夜の眠りを確保するべきか、それとも諦めるべきか? 究極の選択である。 |