「託生、キスしたら入場料が半額になるんだって!」 ギイの嬉々とした台詞に、ぼくと章三はげんなりと顔を見合わせた。 「通天閣」ならぬ「チュー天閣」 誰がこんな阿呆な企画を考えたんだ。 「よし、半額だ半額」 ギイがぼくの手首を掴む。 「ちょっ、冗談じゃないよ、人前でそんなことっ、だいたい恋人同士が対象のイベントだろ!」 「いや、同性でもいいらしいぞ」 章三が説明書きを読んで言う。 なるほど。見るからに悪ふざけという感じで、堂々とキスしてる男同士もいる。それを見た周りからは拍手と笑い声が上がっている。 「これ、口と口じゃないとだめらしい」 「ぜ、絶対やだ!!!」 「別にいいじゃん、減るもんじゃなし」 「減るとか減らないの問題じゃないよ」 ぐいぐいと手を引っ張るギイを何とか引き止めようとするが、馬鹿力には叶わない。 「そんなに半額がいいなら、赤池くんとすればいいだろ」 思わず叫ぶと、即座に後頭部を叩かれた。 「葉山、不気味なことを言うな」 「だって」 「託生、半額になる上にビリケン絵馬1枚とポッキー1箱ももらえるんだってさ」 「ギイ、お前、本当に御曹子か?」 章三が力なく肩を落とす。 嫌だ嫌だとどれだけごねたところで、ギイに勝てるはずもなく、ぼくは大阪の地で恥ずかしい目にあった。 |