その日の夜の食堂メニューはお好み焼きだった。
お好み焼きも祠堂初の試みらしい。
４人一組でテーブルにつき、自分たちで好き勝手にお好み焼きを作るというものだ。
食堂のおばちゃんたちにしてみれば、タネだけ提供すればいいわけだが・・・
「けっこう準備も大変だろうなぁ」
ギイがうーんと腕を組む。
「だから初めての試みなんだろ。好評なら一月に１回くらいお好み焼きの日を作るらしいぜ」
かしゃかしゃとボールでタネをかき混ぜて、章三がじゅわっとホットプレートに流し込む。
すると、ここでギイが待ったをかけた。
「待て章三、肉を先に焼かなくていいのか」
「肉なんてタネの上に置けばいい」
「生だったらどうする」
「レアだって食うアメリカ人が何を言う」
「何だと人種差別だ！」
コテを貸せとギイが手を伸ばす。お前は黙って食ってろ、と章三がコテを死守する。
「・・・・赤池って鉄板奉行でもあったんだな」
ぼくの隣で利久がこっそりと耳打ちした。
「まぁ赤池くんはそれっぽいよね。だけどギイまでお好み焼きにうるさいなんて」
まだ喧々囂々とお好み焼きの作り方で言い合う２人にぼくは肩を落とす。

（何だかつい最近、こんな場面を見た気がする）

デジャブか？と首を傾げるぼくに、ギイと章三が
「託生、お前だって肉を先に焼くだろ？」
「片倉、普通はタネの上に乗せるよな」
と、詰め寄る。

（美味しければ、どっちでもいいです）

何でもいいから静かにお好み焼きを楽しみたい。
ぼくと利久は目の前で焼きあがっていくお好み焼きを見つめながら深々とため息をついた。