初めての・・・


「託生、これ読んだか?」
そう言ってギイから手渡されたのは、今週発売の情報誌。
購買では売ってないないので、恐らく麓の街へ出かけたときに買ってきたのだろう。
いわゆるデートスポットの紹介とかが載ってるカップルご用達のもの。
何だろ。春にもなったし、どこかへデートへ行こうってことなのかな?
ぼくはとりあえず受け取って中をぱらぱらとめくる。
「ここ!!」
いきなりギイがページをばんと叩いた。
「びっくりした。いきなり叫ぶなよ、ギイ・・・」
「今月の特集見てみろよ。お洒落なシティホテルだってさ。ほら、部屋の写真も出てるぜ。割引券もついてたり」
「・・・割引券?」
とても御曹司が口にする言葉とは思えない。
「オレ、一回行ってみたいんだよ」
「行けば?外泊許可とってさ」
何気なく言った言葉に、ギイが満面の笑みを浮かべる。
「じゃ今度の週末、一緒に行こうぜ」
「え、まぁ・・いいけど・・・」
わざわざ街のホテルに泊まりたいなんて、ギイも物好きだなぁと思ったぼくだったが、ギイの言う「シティホテル」というのがいわゆる「ラブホテル」なのだということが分かったのは、週末ギイに連れられて行ったホテルの前で、だった。
激しく抗議してももちろん後の祭りで、ぼくは適当な返事をしたことを、深く深く後悔することになったのである。


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あとがき

高級ホテルではなくて、あえてラブホテル!というのが興奮するらしい。