初めての・・・ 4


絶対絶対嫌だ、とさんざんゴネていた託生をようやくバスルームに連れ込んだ。
恋人と一緒にお風呂。これも男の夢の一つだよなぁ、なんて悦に入っていると、託生は、
「やっぱり恥ずかしい」
と上目遣いにオレを見た。
バスタブの端に膝を抱えて座り込む託生は、この期に及んでまだ不満いっぱいの顔をしているのだ。
「なーにが恥ずかしいんだよ、オレ、託生の身体なんて全部知って・・・」
最後まで言う前に、向かい側からばしゃっと託生にお湯をかけられて、オレは思わず目を閉じた。
「っぷ・・・おい、何するんだよ」
「ギイが変なこと言うからだろっ」
「変なことなんて言ってませーん」
「言っただろ」
「ホントのことだろ。だいたいなぁ、今さら恥ずかしいって何だよ。さっきまでさんざん・・っ、ぷ、だからお湯をかけるなっ」
「もうっ、ぼく出るよ」
「こらこら、まだ温まってないだろ」
オレは慌てて託生の手を引き寄せる。広げた足の間に据わらせて、逃げようとする託生を背中からそっと抱きしめる。
「ギイっ」
「こういうのって恋人っぽいよなぁ、あー幸せ」
「・・・」
「何だよ、まだ恥ずかしいって思ってるのか?」
「そりゃね、これが赤池くんとかならぜんぜん平気だけど・・」
託生の言葉にオレは混乱した。
「おい、何で章三だと平気なんだ?」
「え、だって別に男同士なら温泉とか普通に入るし・・・」
「オレだって同じ男だろ!」
「そうだけど・・ギイは・・違うだろ・・・普通の友達じゃないし・・」
託生はぱしゃんと湯を弾く。
友達なら平気だけど、恋人とは恥ずかしいのだという託生の言葉に、オレはよしよしとうなづく。
「オレ、お前の恋人だもんな」
首筋に口づけると、託生はひゃっと色気のない声を出した。
このままここでもう一度なんて言ったら、そりゃもう託生は怒るだろうけど、お風呂で・・っていうもう一つの男の夢を実現させるべく、オレは託生の身体を引き寄せた。


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あとがき

寮の風呂は狭いから一緒には入れないだろうなぁ