信じるものは救われる


「葉山さん、俺たちってやっぱり赤い糸で結ばれてるんっすねー」
偶然街で出会った真行寺につかまってしまい、やや強引にカフェに連れ込まれた。
寒かったから温かいココアが飲めるのが嬉しいんだけど。
「あのさ、真行寺くん、ぼくちょっと約束が・・・」
「またまた。一人で本屋から出てきたの、見てたんっすよ。帰りは一緒に帰りましょ」
「だから、約束があるんだってば」
「だったらどうして俺に付き合ってくれたんですか?」
「ただの時間潰しだよ」
「ひっでー。葉山さんていつも何気に厳しいっすよね」
よよよ、とわざとらしく泣くふりなんかしても、図体のでかい男がすると滑稽だ。
ぼくは思わず笑ってしまった。
「あ、葉山さんが笑った」
「真行寺くんはいつも楽しそうだね。三洲くんが羨ましいよ」
だったらいいんですけどねぇと真行寺が苦笑する。
いつも自信なさげな真行寺だけど、一緒にいて楽しくない人と付き合ったりはしない。
三洲くんはちゃんと真行寺のことを好きだと、ぼくは思っている。
「あー、葉山さんとお茶したなんてギイ先輩に知られたら、俺、いじめられたりするんすかねー」
「お茶飲んだくらいでいじめたりしないさ」
ふいに頭の上から降ってきた声に2人して顔を上げる。
そこには噂のギイがいた。
「わわわ、ギイ先輩っ!!」
いきなり真行寺直立不動で立ち上がる。
「待たせたな、託生」
「あ、あ、あの、もしかして約束って・・・」
恐る恐るといった感じで真行寺がぼくを見る。
「うん、ギイと約束してたんだけど・・真行寺くんぜんぜん信じないから」
「うわー。まさかギイ先輩との約束だったとは!!!す、すみません〜」
「何そんなに恐縮してんだ。真行寺、どうせなら一緒にランチするか?おごるぞ」
ギイがぼくの隣に座ってメニューを広げる。

(ある意味それっていじめなんじゃ・・・)

と思ったぼくだけれど、おごりと聞いて喜ぶ真行寺に、まぁいいかと思い直したのに、
「託生はあとでオシオキ」
と、こっそりとギイがぼくの耳元で囁く。

何で!!ぼくは無理矢理連れてこられただけなのに!
理不尽だ、とぼくはヤキモチ焼きの恋人の足をこっそり蹴飛ばした。



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あとがき

この状況で3人でランチ。真行寺がいたたまれない。