深夜の通販番組は魔物である。 ソファに並んで座り、見るともなく見ていたテレビ番組はいつの間にか通販番組になっていた。 「託生、あれ欲しい」 「んー?」 手元の楽譜から顔を上げると、テレビに映っていたのは何やらわけの分からないものだった。 布団? いや、何て言えばいいんだろう。2人で一緒にくるまって眠るための・・・パンケーキ? ふわふわのパンケーキに2人はさまって、くるんと端を持ち上げて、ぱちんとボタンで止めて一緒に寝る・・・って、何だろう、このわけの分からないものは。 半ば呆然とテレビを見ていたぼくを、ギイは何を勘違いしたのか・・ 「託生も気に入った?あれならさ、少々寝相が悪くても離れることないよな」 よし電話しよう、というギイを必死に止めた。 「ギイ、ぼくは寝相は悪くないし、あんなの必要ないよっ」 「だけど、すっげー密着して眠れるぞ」 「いやいやいや、今だってたいがい密着して寝てるし!!!」 いつもギイがぎゅうぎゅうとぼくを抱きしめて眠るから、おかしな寝違いが起きるくらいだ。 「何だ、良さそうだと思ったんだけどなぁ」 心底残念そうにギイがつぶやく。 別に通販番組で何か買うのはいいんだけど、どうしてギイはおかしなものにばかり興味が湧くのだろうか。 やっぱり頭のいい人って分からない。 ぼくはまだ楽しそうに通販番組に熱中しているギイを横目に、こっそり首を傾げるのだった。 |