「葉山は将来何になりたいんだ?」 章三に尋ねられて、ぼくが答えようとするより早く、 「そりゃあ託生はオレの奥さんだよな」 とギイが答えた。 その瞬間、章三の周りの空気が冷えた気がした。 「もうっ!ギイがおかしなこと言うから赤池くんに睨まれただろ!」 「章三が睨んだのはオレだろ?託生じゃない」 「そのあとぼくのことも睨んだ。ギイの躾をちゃんとしろって」 「躾って何だよ」 だいたいギイの奥さんって何だよ!ふざけたことばかり言うんだからな、ギイは。 「だけどさ、託生はまだ将来何になるか決めてないんだろ?」 「そうだけど」 「じゃあいいじゃん、オレの奥さんで」 違うっ。何かが違うっ!! 言い返したいのは山々だけど、どう言えばギイにわかってもらえるのかが分からず、ぼくはそのうち反論しよう、と心に決めたのだった。 |