つん、と頬を突かれて、ぼくはぎょっとして身を引いた。 目の前にはギイ。 「・・・あの、ギイ?」 今突いたよね?ぼくの頬。 何で? 何か意味あるのかな?? ぐるぐると考えても、ギイの突然の行動の意味が分からない。 そんなぼくに、ギイがくすりと笑った。 「託生のほっぺたって柔らかいなぁ」 「・・・・」 「どれくらい柔らかいかちょっと試してみたくなってさ」 「・・・・」 にこにこと微笑むギイに、何を言っていいか分からず、ぼくはじっとギイを凝視してしまった。 1年の時、ギイは遠くから見るだけの人で、ただただ何でもできる優秀な人という印象しなかったのだけれど、今こうして同室になって日常を共にするようになると、その印象は一変した。 「ギイって・・・」 「うん?」 「実はすごく変な人なのかな」 「普通だろ?」 あっさりというギイ。 そうか。 頭のいい人ってやっぱりちょっと普通とは違う感覚を持ってるんだなぁと思っていたのだけれど、章三には、 「そういう感想しか持てない葉山の方がずっとおかしい」 とずばりと言われた。 ギイは「割れ鍋に綴じ蓋」と言って、どこかご満悦で、やっぱりその感覚も分からないと章三に突っ込まれていた。 |