猫飼ってみました 1


「あれ、ギイどこいっちゃんだろ」
さっきまでそこにいたのに、ギイの姿がない。
つやつやとした白い毛並みのギイは、どこか気品があって人に媚びたり懐いたりすることがない。
好き勝手外へ遊びに行っても、時間になればちゃんと託生の元へと帰ってくる。
託生がいる時は、決してそのそばを離れようとしない猫だった。
「ギイ?おかしいな、あ、もう時間だ行かなくちゃ」
託生は鞄を肩にかけて、玄関の鍵を手にした。
扉を閉めて、さて大学へ向かおうと思った時、肩にかけた鞄がやけに重いことに気がついた。
嫌な予感がして鞄の中を見てみると、そこにはギイがちんまりと納まっていた。
「ギイ、こんなところに!」
道理で鞄が重たいわけだ。
「だめだよギイ、大人しく留守番しててよ」
「にゃー」
つんとそっぽを向くギイに、託生はやれやれとため息をつく。
ここで押し問答していてもどうせギイは聞きやしないだろう。
腹をくくって、託生は鞄の中にギイを入れたまま学校へと急いだ。
「託生が猫を飼ってるというよりは、猫が託生を飼ってるみたいだな」
と学校の友達たちには笑われた。
ギイは知らん顔で託生の膝の上で気持ち良さそうに伸びをした。




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あとがき

ギイ、猫になってもストーカー!