猫かわいがりという言葉があるが、なるほどそれはこういうことか、と章三は目の前のギイとその愛猫のタクミを眺めて思った。 「んー、タクミ、今日も可愛いなー」 「にゃーーーーーっ」 「ギイ、そんな風にぎゅうぎゅう抱きしめたら、タクミが潰れちまうぞ」 「こんなに可愛いのに、抱きしめないわけにはいかないだろうが」 周りからはクールなイメージの御曹司が、まさかこんなアホ丸出しの顔で猫に頬ずりする姿をいったい誰が想像できるだろうか。 「にゃっ!」 とうとうタクミはギイの手から逃れ、章三の後ろへと逃げ込んだ。 「お、やっぱり嫌だったんだなぁ、タクミ」 章三がタクミの頭をくるりと撫でる。 「章三!お前、オレのライバルになるつもりか?」 「お前はいっぺん病院へ行け」 「オレのタクミだぞ!」 ほらほらとギイがタクミへと手を差し伸べるが、タクミはつーんと知らぬ顔で章三のそばに座っていた。 もちろんギイががっくりと落ち込んだのは言うまでもない。 猫馬鹿・・・いやタクミ馬鹿もここまできたらたいしたものだ、と章三はある意味感心しながら、自分のそばで毛繕いをする託生を眺めた。 |