ぼくの恋人は「タクミ」という名の猫を飼っている。 とても怖くて値段が聞けないような高そうな首輪をしていて、どうやら迷子になってもすぐに見つけられる装置がついているらしい。 「ギイ、この子、前に会った時よりもやつれてるような気がするんだけど」 「そんなわけあるか。週に1回は美容室へ連れてってるし、餌だって最高級品にしてるし、毎日一緒に寝てるし」 一緒に寝てるって、何なんだそれ、と思ったが口にはしない。 それはタクミに対してヤキモチというよりは、可哀想にという哀れみである。 タクミはにゃーんと小さく鳴くとぼくの懐へと飛び込んできた。ごろごろと喉を鳴らして離れようとしないタクミに、ギイはちょっとばかり面白くない気持ちになったようだ。 普通は飼い主の恋人にヤキモチを焼くというのが正しい飼い猫の姿ではないのだろうか。 それなのに、飼い主よりも懐くってどういうことだ? というところなんだろう。 「ギイの可愛がり方ってちょっと濃いから、そりゃタクミだって疲れるよ。ねー、タクミ?」 「にゃーん」 「ほら」 「ほらじゃない。ほーらタクミ、ちょっとだけあっち行ってろ。オレたちの邪魔するなよ?」 タクミをひょいと抱き上げて、ギイは部屋の外へと出して、入ってこないように扉を閉めた。 「可哀想じゃないか。一人ぼっちにするなんて」 「タクミは可愛いけどな、託生の方がもっと可愛い」 可愛がらせて、と甘えてくるギイに、ぼくはしょうがないなと笑って口づけた。 「ギイ、たまにはタクミを自由にしてあげなよ」 「託生が一緒に暮らしてくれるなら考える」 「・・・・・一緒にねぇ」 どうしようかなぁと考えるぼくを、ギイは猫を抱きしめるようにふんわりと抱きしめた。 |