ギイの住んでるマンションはぼくが住んでる小さなハイツとは違ってやたらと広い。 小さいながらも猫専用の部屋があるほどに。これだから御曹司は!と思ったけど、 まぁギイにしてみれば普通のことなんだろう。 「さ、出ておいで」 ケージを開けてぎいに声をかける。そろそろと出てきたぎいは、初めて訪れる家に きょときょとと視線を巡らせた。 たぶん部屋の匂いも違うだろうし、タクミの匂いもするはずだ。 警戒した様子でぎいは辺りをぐるりと見渡した。 「どうかな」 「さてね。じゃタクミを連れてくるか」 ギイが隣の部屋からタクミを抱えてやってきた。ぼくもぎいを抱え上げ、二人して様子を窺う。 「さ、はじめましてって」 そっと二匹を床に下ろす。 ぎいはぼくの足元でじっとタクミを眺めている。 同じようにタクミもギイの足元でぎいのことを眺めている。 大丈夫かなと思ったその瞬間、いきなりぎいがタクミに飛び掛った。 「ぎいっ!!」 「にゃー」 「タクミ!」 「んにゃー」 タクミの上に飛び乗ろうとするぎいと、ギイの足をよじ登って逃げようとするタクミ。 慌てて抱きかかえようとしたぼくは、したたかぎいに引っ掻かれた。 地獄絵一歩手前とはこのことだった。 |